'67 FENDER MUSTANG BASS Red/Rose SOLD

ショートスケール・ネック(30インチ)を持つ“ムスタング・ベース”は,'66年に発表されたモデルだ。 CBS体制のフェンダー社から登場したモデルであるが, 顧問として残っていた“レオ・フェンダー”が積極的に開発に関与したモデルとされている。
ムスタング・ベースはラインナップ上の中級モデルとして位置づけられていたが, フェンダー・ベース唯一の「調整可能なミュート」機能を持ったベースだ。 ジャズ・ベースなどにもミュート機能は付いていたが,ON/OFFや深さ調整などの自由度に欠けていた その点ムスタング・ベースには,ミュートの掛かり具合を各弦個別に調整できるネジが取り付けられている。 ちなみに,調整機能付きミュートはレオ・フェンダーにとっても画期的なアイディアと判断したようで, '70年代に設計した“ミュージックマン”のベースにも,さらにアイディアを進めた形で採用している。
ピックアップには,スプリット・シングル・コイル・タイプを1組搭載している。 これは,一見プレシジョン・ベースでのスプリット・タイプと同じ仕組みと思われがちだが, 実は,プレシジョンでは互いに逆巻きコイル・逆磁極ポールピース(いわばハムバッキング・ピックアップ)なのに対して, ムスタング・ベースではコイルは互いに逆巻きなものの,磁極は同じとなっているのだ。 つまり,ふたつのコイルはフェイズ・アウトしているわけだ。 しかし理論上は,1本の弦の振動はひとつのコイルでしか拾わないため,実用上は問題ないということだ。 実際には,2,3弦のサウンドが若干フェイズ・アウト気味になるが,それがムスタング・ベース・サウンドの特徴とも言える。 恐らく,磁界のコントロールという観点から,意図的にこのようなポールピース構造としたと思われる。
ムスタング・ベースのボディ・カラーは,同時期のムスタング・ギターと同様に, '69年中期まではこの'67年モデルのような“レッド”フィニッシュと そのほかにはホワイト,ブルーの計3色だった。 当時はこのレッド・フィニッシュがカタログに掲載されており,実際に現存するものではレッドを多く見かける。
この'67年モデルは小傷は多少見られるものの,塗装感やパーツのメッキ具合が新品時の光沢を残しており, この時期のモデルとしては最上級のコンディションと言える。 もちろん,ミュート機構も装備している。

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