'69 SWINGER Blue/Rose
SOLD

この“スインガー”は別名“ミュージック・ランダー”“アロー”などと呼ばれ,カタログには一度も載ることのなかった非常に貴重なモデルである。いくつかの楽器店へ特別モデルとして出荷されたようだが,その中のひとつの店では独自にモデル名を“SWINGER”と名づけ,モデル名のステッカーを作成しブランド・ネームに並べて貼って販売していた。しかし,それは単なる粘着シール状であったためこのように剥がれてしまったものも多い。それ以外の店では,当初から何もステッカーは貼っていなかったようだ。'69年頃から出回り始め,総生産本数は200〜300本と言われている。
スインガーのネックには,本来は別機種のために製造された22 1/2インチ・スケール・ネックの過剰なストックを処理するため,ヘッド形状をリメイクしたものが使用されているのだが,その経緯は次のように推測される。'64年に中級モデルと言える“ムスタング”が発表されたのを契機として,それまで22 1/2インチ・スケールのみの設定であったスチューデント・モデル2機種が“ミュージック・マスターII”と“デュオソニックII”として仕様変更され,24インチ・スケールのネックも併売されるようになったことで,22 1/2インチ・スケール自体の人気が低下していった。さらには,スチューデント・モデルにもトレモロ・ユニットをという要望の結果'67年に24インチ・スケールの“ブロンコ”が発表され,スチューデント・モデルの主力商品がそれに移行したこともあって,主にミュージック・マスターIIとデュオソニックIIのために用意した22 1/2インチ・スケールのネックの未完成品を大量にストックする事態となってしまったのである。67〜68年以降22 1/2インチのネックはほとんど製造されていなかったと思われ,そのことはネックのエンド部分に押された,木加工が完了した年月を示すスタンプが'66〜'67年のことが多いことでも証明されている。
また,このモデルのボディにはやはり過剰にストックしていたベースV('65年発表の5弦ベース)のボディをリメイクしたものが使用されている。ピックガードを開けると,通常のスプリット・ピックアップとは異なった形状をした,ベースV用のピックアップ・キャビティを発見することができる。